【コラム】2年目、不安な船出 -プロゲキに未来はあるのか-

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※以下、文字情報です。

今回、4月のプロゲキを観て、どうしても書かせてもらいたいと編集部に進言した。

「このままだと、プロゲキ、終わっちゃいますよ!」

昨年4月に初めてプロゲキ!を観た感想は、「井口さん、攻めてるなあ」だった。顔面ドアップのチラシ、芸術村ではなく片町で、しかも2カ月に1本公演を打つスタイル、そして旗揚げでの3本の一人芝居。

長く金沢で演劇を観てきて、劇団ドリームチョップの公演も何度が観てきた者としては、やや(いや、かなりか)閉塞感のある金沢の演劇に新しいことが始まりそうだとワクワクしたものだ。だからこそ、井口氏にレビューを依頼され喜んで書かせてもらってもいる。

しかし、だからこそあえて苦言を呈したい。去年と何が違うんだと。

役者井口時次郎としては今回も頑張っていたと思うし、わかりやすいコント仕立ての作品から般若心経を取り扱った実験的なものまで楽しんで観ることができた。だが、ひとりで三本上演するのは昨年となんら変わることがない(今年のチラシが昨年の旗揚げのものを模していることが象徴的だ)。観客数もむしろ旗揚げの期待感がなくなった分、減少していたように見えた。そして何より客席にいる観客が私を含め常連の方が多かった。これでは未来に期待は持てない。

「プロゲキ!は単なる演劇公演ではない、まちにライブパフォーマンスを根付かせる、社会実験なのだ。」

そう高らかに宣言したのは何だったのか。

もちろん、井口も手をこまねいているわけではないだろう。GWに「プロゲキ!重大発表」として、8月以降の演者の発表やFutureStageのオーディション開催などを打ち出した。特に8月に出演する、金沢市出身で現在は東京で怪談師として活動している山口綾子氏はぜひ観てみたいと思うし、12月の風李氏とのリマッチも楽しみではある。

しかし、それらがこれまでの金沢の演劇の閉塞感に風穴をあけるものでなければ、期待が大きいだけに失望も大きくなるだろう。

個人的には、県外からいわゆる「まだ見ぬ強豪」を招聘してくるのも大切だが、若手の発掘・育成も忘れないでほしい。昨年まさに奮闘していた姫川あゆりや、4月のFutureStageに登場した山根ほのかは非常に楽しみな存在である。むしろ、彼女たちこそがプロゲキの未来の光と言えるかもしれない。

とにかく。

わがままな観客は新しいもの、刺激的なものが観たいのだ。金沢のまちなかにあるライブハウスに、生の舞台を観に来る客があふれている。舞台上では若手が挑戦的なパフォーマンスを行い、県外からの実力者がそれを受けて立つ。観客は自身の審美眼を頼りに投票を行い、勝者と敗者が明暗を分かつ。会場は熱気に包まれ、2か月後を楽しみにワクワクしながら家路につく。

それはかなわぬ夢なのか。

役者としてではなく、プロデューサーとしての井口氏に強く問いたいと私は思う。

(継木承一郎)

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