観どころ感どころ(「Esperanza」)

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以下、文字情報です。

 観劇初心者でも観やすい短編を複数並べ、入場式や観客投票での決着などプロレスのようなエンタメ性を導入する。かつ演劇の持つ即時性や一回性を重視、LIVE感こそを中心に据える。そして「プロゲキ!」という共通のタイトルで、同時多発的に日本中で同形式の公演を行い、全国に存在する「まだ見ぬ(いや、「まだ観ぬ」か)強豪」をそれぞれの地域の観客に届けていく。これこそがプロゲキ代表の井口が掲げる「プロゲキ・ネットワーク構想」である、

 今回、参加するのはプロゲキ金沢の井口、プロゲキ富山主宰の石川雄士が所属する「び~めんぷろじぇくと」に加え、今年9月に旗揚げ公演を果たしたプロゲキ福井で最多得票となった「本家劇場(本家徳久・鈴木みらの)」、プロゲキ富山で人類史を題材とした堂々たる公演を行った長野の池田シン、そしてなんと九州佐賀県より「劇団 ぼくの時間」の5団体。北陸三県が中心となりながらも、中部、九州とそのエリアを広げた本公演は「プロゲキ・ネットワーク」の未来を先取りした夢の舞台だ。2年半前には(私を含め)誰一人真剣に聞くことがなかった井口の理想は着実に形となりつつある。

 地方で活動する演劇人にとって県外公演はやってみたいがなかなか手が届かないものである。それは費用がかかるということもあるが何より知らない土地での集客が困難だからである。義理や付き合いではない「こちらのことを知らない観客」に観てもらいたい。しかし当然その土地ではだれも「こちらのことを知らない」がゆえに集客ができないのだ、これはテレビなどのメディアに出ることがない地方演劇人の宿命といえる。

 移動費などの経済的問題はあるものの、そこさえクリアできれば(または移動する演劇人側が負担する覚悟さえあれば)プロゲキ・ネットワークは地域演劇の希望となる可能性を大いに秘めている。

とは言え、肝心のクオリティが伴わなければ理想は絵に描いた餅となってしまうだろう。その点についてはどうだろうか。

 今回井口はこれまでに上演した作品の中から反応がよかったものを再演するということである。プロゲキ福井で再演は経験済みであり、プロゲキの舞台は言うまでもなく経験十分である。どの作品を演じるのか楽しみに待ちたい。

 富山のび~めんぷろじぇくとでは笠谷ん氏に注目だ。芸術村での百万石演劇大合戦で見せた圧倒的な声量には本当に驚かされた。その他の俳優もベテラン揃いであり、「実力派」という言葉がぴったりだ。

 福井の本家劇場は、9・13で観せた無言劇で精密に鍛えられた身体性を発揮した。「今回はセリフがある」とのこと。まだまだ見せていない引き出しがあるはず。注目だ。

 長野の池田シンはプロゲキ富山で圧倒的な存在感を示した。ミュージシャン出身で演劇のキャリアは浅いとのことだが、ダマされるわけにはいかない。今回は投票こそないが、観客の指示をまとめてかっさらうのを虎視眈々と習っていること必定だ。

 今回異色となるのが佐賀県から参戦する「劇団 ぼくの時間」だ。まだまだ若い劇団だが高校演劇ではかなりの実績を持つという。台風の目となる可能性はもちろんある。

 おいおい、観どころいっぱいですよ。                        

                                     (継木承一郎)

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