8・27「怪談」観どころ感どころ

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以下、各ページの文字情報です。

【観どころ感どころ】(継木承一郎)

まずは何といっても出演するメンバーが魅力的である。プロゲキ代表の井口時次郎に加えて、金沢演劇界の重鎮髙輪眞知子、金沢出身で全国を飛び回る人気落語家かはづ亭みなみ、そして急遽メンバーに滑り込んだ演劇ユニット浪漫好の柳原成寿と、タイプもキャリアもさまざまな4人が出揃った。

しかも今回は観客投票によって優劣勝敗を決定するという。まさに「ごちゃごちゃ言わんと誰が一番怖いか決めたらいいんや!」というキャッチコピーそのままの企画である。筆者としては当然、誰が勝つのか興味津々であるが、おそらくは4人とも、「やる前から負けること考えるバカいるかよ!」といった心境に違いない。

勝敗の行方に胸震わせるか、怪談の怖さにドキドキするか。当日を心待ちにしたい。

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以下、演者ごとの文字情報

①柳原成寿

【観どころ感どころ】(継木承一郎)

ほかの3人と比較すれば明らかに経験も技術も明らかではない。まさに「未知数の男」、それが柳原成寿(やなぎはら・なるとし)である。

しかし前回公演のカーテンコールに乱入することで4人目の演者の座を勝ち取ったその度胸と行動力は注目すべきだろう。演劇は誰にでもできる。ただ一つだけ条件があるとすれば自己の責任と覚悟を持って「舞台に上がる」と宣言することだ。柳原はそのことを本能的に理解している。臆することなく挑戦する以外に道を切り開くすべはない。

「俺はお前らのかませ犬じゃないぞ」この男、今回のダークホースであることは間違いない。

【本人インタビュー】

 幽霊はどのような目的で私達の前に現れるのか、私は怪談を聞くとよく考えてしまいます。

幽霊となった存在。彼は生きていたころ、何を感じて何を思っていたのか、そこに共感できる部分もあればちょっと理不尽すぎないかと思う部分もあります。本当の事は誰にもわかりませんが、幽霊が怪奇現象を起こすQのアンサー、それを探るのがとても興味深かったりします。

私が今回お話しするのは「悪夢」の話です。悪夢は誰しも一度は見た事があるでしょう。だからこそ、より身近な怖さを体感していただけると思います。

悪夢が織りなす怪異なひとときを、心ゆくまでお楽しみください。

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②髙輪眞知子

【観どころ感どころ】(継木承一郎)

髙輪眞知子は現在金沢で活躍する女優の中でも鏡花劇場、浅野川倶楽部と最も長いキャリアを持つひとりと言ってよいだろう。全身から醸し出す雰囲気やせりふの色気は、観る者聴く者を魅了せずにはおかない。はじめて彼女の朗読を体験する観客は金沢にこんな女優がいたということに驚きを感じるはずだ。

今回の演目は半村良作「能登怪異端」から「蛞蝓(なめくじ)」。タイトルだけでもなんだかむず痒くなってくる気がするが、彼女の声によってさらに何かが全身を這い回るような不思議な錯覚に陥るにちがいない。

「読むだけ」などと決してあなどるなかれ。

今回の勝敗が仮に演技者としての格で決するとするならば、間違いなく髙輪眞知子が最有力である。

【本人インタビュー】

朗読とは、話す側と聴く側がともに作品世界を共有することで物語のイメージを浮き彫りにする劇的体験です。

さて、これが怪談となるとどうなるものか……

私にもとんとわかりませんが、まだ見たこともない世界を擬音で楽しんでください。

— ジュクジュクジュクジュク

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③かはづ亭みなみ

【観どころ感どころ】(継木承一郎)

新進気鋭とは彼女のためにあるような言葉だろう。今まさに勢いに乗りに乗っている女流落語家、いや「女優落語家」がかはづ亭みなみだ。女優と落語家の二刀流で東京・愛知・福岡・そして地元金沢とその活躍の場はとどまる所を知らない。今年4月には金沢・赤羽ホールにて俳優風間杜夫をスペシャルゲストに招いた独演会を開催したことも記憶に新しい。

その愛らしい風貌から、「子は鎹(かすがい)」の亀吉や、「品川心中」の金蔵の印象が強かったが、今回は怪談ということで満を持しての「死神」。否が応でも期待が高まるというものだ。

その勢いと実力でプロゲキ!の舞台をも制するか。かはづ亭みなみを今チェックしておいて決して損はない。

【本人インタビュー】

「死神」は落語の中でも大ネタと呼ばれるものです。前座見習いの立場(場合によっては二つ目でも)かけられない演目です。今回師匠にも許可を頂いて「磨いてきなさい」と言われましたのでギラッギラに磨いてプロゲキ!にてご披露できればと思っています。

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④井口時次郎

観どころ感どころ】(継木承一郎)

井口の芝居を一言で評するとすれば「情念の演技」であろう。

役の人物をひたすらに想像し、その思いを代弁するように自身の肉体に憑依させる。4月に演じた哀しきストーカー、6月に演じた夢を追う初老のデザイナーなどはその好例である。プロゲキ!という企画自体が、井口のそうした演劇観を色濃く反映したものとも考えられる。

ここで忘れてはならないのは彼の年齢、言い換えるならば生きてきた時代だ。第2次ベビーブーム、就職氷河期、失われた20年……。時代によって社会の価値観やルールが変化していく過渡期を過ごしてきたからこそ、ある種の「情念」が生まれてきたとは考えられないだろうか。

こんなはずじゃなかった、俺の話を聞いてくれ、誰にも理解されなくても自分には言いたいことがあるのだ、井口が演技の中でよく見せる「叫び」には、社会の理不尽や不条理に対する異議申し立てが潜んでいるように私には感じられるのだ。

「怪談」では往々にして、表には現れない死者の(あるいは生者の)情念が語られる。だとすればそこは井口の独壇場とも言えるのではないか。井口が今回、観客投票によって勝敗を決しようとした背後には、彼なりの冷徹な計算がある。私にはそう思われてならない。

【本人インタビュー】

勝つよ、それだけ。

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