(12・21金沢公演リポート)KoPタイトルマッチ 井口時次郎が朱門を下し初防衛に成功!

【総評】

【杏亭キリギリス】

【朱門】

【井口時次郎】

***

【総評】

ドキドキした。本当の本当にどちらが勝つかわからなかったから。

そのくらい、両者の作品はタイプこそ違えど、いや、「タイプが違う」ことにこそ意味があるのだと帰宅後ゆっくり考えて思った。

ここまで毎回プロゲキ!でMCを務める朱門だが、KAZARI@driveで活躍する新進気鋭の若手俳優である。むしろそろそろ「若手」などと呼ぶのは申し訳ないキャリアの持ち主とも言えよう。その朱門が、昨年風李一成氏が演じた「HAGAKURE外伝」の別バージョンを演じ狭いDOUBLE金沢の舞台で刀をブンブン振り回す。そこに生演奏で風李氏も参戦するという胸アツ展開。

対する井口は得意とする「モテない男の悲哀」で迎え撃つ。しかも1990年代のCMである「シンデレラ・エクスプレス」をモチーフにして私のようなオールドファンのノスタルジーを刺激する。

両者ともに自分の得意とするフィールドで高いパフォーマンスを演じて見せた。

午前回の投票。今回MCは演芸列車東西本線の西本浩明氏が務め、観客の緊張を煽る。

結果として9票の差がついたものの、午後回で一気に逆転もあり得る、そんな空気感が漂っていた。観客もみな本当に勝敗の予想がつかなかったのではあるまいか。

「演劇に勝ち負けはそぐわない。得票数の多いものがいい作品であるとも限らない。」

毎回MCがコメントする言葉だ。しかし、それでもやはり勝ちたいのが人情だろう。

団体として昨年設立したばかりのKoPタイトルを防衛せずに明け渡すわけにはいかない。最終結果発表で井口の名がコールされた瞬間、井口の顔からは歓喜と共に安堵の表情が読み取れた。

もちろん、作品を観に行っているのだが、そんな役者の素の表情もプロゲキの魅力といえる。

次回のプロゲキは2027年4月「女子プロゲキ!」ということで井口は出演しない。このKoPタイトルの次回防衛戦がいつになるのか、金沢か、あるいは他地域で行うのか。そしてどんな相手が井口に挑戦してくるのか。

2027年もプロゲキから目が離せない。(継木承一郎)

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【杏亭キリギリス】

以前井口との対決で勝利したこともあり、その実力は折り紙付きだ。

そんな杏亭キリギリスは今回、午前回で落語「鮫講釈」を、午後回では場末のゲイバーのママに扮した一人芝居と、全く毛色の違う2作品を演じた。

「鮫講釈」はプロゲキ富山でも語った持ちネタである。海の旅のゆったりした日差しを感じる語りからスピード感満載の講釈へのギアチェンジはまさに圧巻。さまざまな古典の引用が楽しい。初めて聴く者にも「落語ってこんなに楽しいんだ」と思わせるハイパフォーマンスであった。

一人芝居の方も実に見事にゲイバーのママに返信してみせた。細かいしぐさや表情などはその高い技術力をまさに見せつけた。ただ、一点苦言を呈するとすれば、「ゲイ」「オカマ」といったキャラクターの造形が一目でわかるようにキャラクタライズされていて、多様性が叫ばれる現在においてあまりに類型的ではないかと私は感じた。マジョリティから見たマイノリティ像にはどうしても差別的なまなざしが含まれてしまう。それを「芝居の毒」と見るかどうか。観る側もぼんやりしてはいられない。演劇とはそういう娯楽なのだと私は、思う。(継木承一郎)

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【朱門】

矜持(きょうじ・自分の能力を信じていだく誇り。プライド。)

朱門の芝居から感じた印象だ。

自分がやってきたことを信じ、自分の力や技を信じる。そしてそれを全身全霊で観客に届けてくる。昨年の風李氏の舞台でも思ったが、「HAGAKURE外伝」は幕末の新選組を題材としており、人名や地名、事件のあらましなど歴史的知識があったほうが観やすいものである。わずか20分という縛りがある中では有利不利ということを言えば不利な内容である。

しかし、関係ないのだ。

やれる。自分なら伝えられる。劇場という場所でそこに観客がいるのなら伝えてみせる。圧倒的なプライドがそこにはあった。

また、舞台にはもちろん朱門がいるわけだが、客席後方では風李氏が生でギターを弾いている。たまらん贅沢だ。その風李氏も最後方から舞台に演奏で煽りをどんどん入れてくる。朱門は井口や観客だけではなく風李氏とも戦っていた。

結果として敗れはしたがそんなことはどうでもいい。舞台には間違いなく朱門の煌めきがあった。

あれ、これって新選組そのものじゃないか。やるなあ、朱門。

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【井口時次郎】

♪雨は夜更け過ぎに雪へと変わるだろう

イントロを聞くだけで、ある年齢以上の世代には否応なく刺さってしまう。JR東日本の「シンデレラ・エキスプレス」。クリスマスイブの夜に遠距離恋愛の彼氏を迎える牧瀬里穂が印象的だった90年代のCMだ。

物語は親友と憧れの女の子が付き合っていると知った主人公の戸惑いと嫉妬が中心に進む。

少しずつ少しずつ下心を隠しながら彼女に近づいていく主人公。このあたりの語りは流石。特に、自分の中に親友への悪意が潜んでいることに戸惑いながらも後には引けないという微妙な表情には、恥ずかしながらそんな甘酸っぱい経験のない筆者にも「まるで覚えがある」かのように感じられた。

クライマックスは彼女へのプレゼントを持って駅のホームを走る主人公。明らかに「シンデレラ・エキスプレス」のCMの再現だ。牧瀬里穂とは似ても似つかない井口。それなのになぜか思わず泣けてくる。ああ、きっとフラれるのに。

お約束通り、親友と二人で仲良く改札を抜けてくる彼女を、痛々しい笑顔で見送る。

クリスマスイブの魔法は起こらなかった。なぜならこの日は23日。「イブ」ではなく「イブイブ」だから。わかってるのよ、わかってるのにグっとくる。ズルいぜ、井口さん。(継木承一郎)

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