観どころ感どころ(2026『怪談』)

【観どころ感どころ】

プロゲキ!発足の2023年より、毎年8月の公演は『怪談 ~ごちゃごちゃ言わんと誰が一番怖いか決めたらいいんや~ 』というタイトルで演者4名によるバトルが行われている。

筆者は初年度から観劇しているが、初年度は高輪眞知子の怪演(とくに第一声の「あんたさん。」が白眉)が鮮烈な印象を残したし、2年目は茶谷幸也の実話怪談風の「サンバ」が秀逸だった。そして昨年はプロゲキ代表・井口時次郎の「能登の古い家の話」で怖い一人芝居というものを初めて観た。

それぞれの年にキーマンとなる演者がいたわけだが、今年はどうか。

東京で怪談師として活躍する山口綾子は3年目の参戦となる。昨年は初登場の時より明らかにプロゲキの雰囲気を理解してアジャストしてきていた。数々の怪談コンペに出場する実力者としては、今年こそという思いは当然あるだろう。一見アイドルのようにも見える風貌にダマされてはいけない。怖いぞ。

演芸列車「東西本線」の西本浩明は、金沢の演劇シーンの中でその実力は広く知られている。6月のプロゲキ落語で盟友の東川清文が井口を下したのに続き、東西本線で2連覇を狙う。

そして何と言っても今回の台風の目となるのは笠谷ん(かさやん)だろう。プロゲキ富山での上演を筆者も観たのだが、顔を白く塗り傾奇者風の着物を身にまとった男が狂気じみた言葉を発しながらどんどん客席に浸食してくるスタイルは芝居以前の怖さがあった。映像とは違って演劇は、演者と観客が劇場という同じ空間の中に存在している。その気になれば演者は客席に飛び込み観客に襲い掛かることも可能なのだ。

もちろん通常はそんなことは起こらない。しかし、「もしかしたらあるかも」と思わせるのが笠谷んの魅力であり怖さなのだ。今回はどのような作品を持ってくるかはわからないが、安心して客席に座ってはいられないことは確かだ。

この3名を迎え撃つのが前年度覇者(注:2023年も制している)である井口時次郎だ。彼の特徴は「ストーリーではなく情念そのものを観せる」というところだろう。2023年の嫉妬に狂う女、24年の地下室に閉じ込められ永遠とも思える孤独に押しつぶされた男など、役の人物の表情や声、想い(怪談の場合は「恨み」だろうか)をダイレクトにぶつけるスタイルは怪談には向いていると思える。

そして、意外な視点をひとつあげるとすれば、「一人で演じるスタイル」の幅である。怪談師の山口はもちろん椅子に座っての語りの形をとるだろうし、笠谷んは狂気をはらんだ一人芝居で舞台を(あるいは客席を)練り歩くだろう。問題は西本と井口だ。両名とも朗読・語り・一人芝居とオールラウンドに演じることができるだけに、どのスタイルで演じるかがポイントとなるのではないか。たとえるなら、山口は緻密に計算された語りでじわじわ攻めてくる寝技中心のグラップラーであるのに対し、笠谷んは破壊力が自慢の立ち技ムエタイ選手といったところか。そこに総合格闘家的な井口・西本がどう絡んでくるか。

いやいや、今年もきっと面白いぞ、『怪談』。

ごちゃごちゃ言わんと誰が一番怖いか決めたらいいんや!

(継木承一郎)

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