(12・17公演リポート)やっぱりKAZARI!

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以下、各ページの文字情報です。

①姫川組

1+1=3になるか。

これまでプロゲキ!では一人芝居を演じてきた姫川あゆりが今回は二人芝居に挑戦した。そしてその共演者は神保柊太。6月のプロゲキ!で演劇ユニット浪漫好の「ジンセイホケン」に出演し、小柄だが耳に快い低音ボイス(最近では「イケボ」というらしい)が印象的だった俳優である。

さてさてお手並み拝見と観たのだが、正直少し物足りなかった。ストーリーは二人の男女がビルの間になぜか挟まってしまい脱出するために背中合わせで移動しながら会話をするというものだったが、ビルに挟まっている肉体という点ではダンスや身体表現を得意とする姫川の実力がしっかりと発揮されていたものの、神保との身体的コミュニケーションでは課題を多く残していた。一方で会話ではストーリーとともに変化していく二人の関係によって神保の魅力である声が色を変えていくさまをもっと楽しみたかった。

二人とも個性的で魅力十分なのだ。それでも1+1が3にならない。そこが演劇の難しいところでもある。しかし、そこは未来のある二人。これを糧にお互いの魅力をそれぞれが取り込んだ「モンスター」に成長してくれることを期待したい。                      (継木承一郎)

②演劇ユニット浪漫好

演劇ユニット浪漫好の作品を観ていて毎回楽しみなのは、常に新しい俳優が登場することである。前回の「聖杯」では柳原美聖、玉城知佳乃が、そして今回は渡邉雅基がプロゲキ!に初参加となった。

今回の「小さな嘘からコツコツと」では渡邉と玉城が中心となりこれまでの浪漫好とはガラリと雰囲気の異なる会話劇を演じてみせた。生活苦から母親に嘘をついて金をだまし取りながらも悪になりきれない主人公(渡邉)が、公園で謎の女(玉城)と出会う。つかみどころがなく、からかいながら主人公に嘘を勧める女。しかしその嘘は「就職が決まった」「彼女ができた」などの前向きなものであり、それを口にしていくと不思議とその通りになっていくのだ。言葉巧みに主人公を幸せに導いていく女。しかし彼女の正体は伝説の詐欺師だったーーー

玉城の軽妙なセリフ回しや奥行きのある表情が非常に魅力的であり、渡邉の人の良さがにじみ出るような演技にも好感が持てた。女を逮捕する刑事(平田渉一郎)や主人公の恋人(姫川あゆり)も的確な演技で脇を固めた。

次はどんな登場人物が現れるのか。まるでロマンスを期待する乙女のような気持ちで私は次回の浪漫好を待つことになるだろう。                           (継木承一郎)

③風李一成

初めて風李一成の芝居を観たのは今から30年近く前になる。

「香林坊魔王伝」「アマデウス」など一人芝居ではないものの、周りを圧倒する存在感で観客を魅了していくさまはまさに「スタア」であった。そんな風李はいま片町にいる。自らが店主のバー「ラストワルツ」で、また同じく片町にあるライブバー「Ash」で、たびたび演劇や朗読などを上演しているという。不勉強にして筆者はそれら片町での上演は観ておらず、久しぶりの風李体験となった。しかし私が昔観ていた頃からはずいぶん時間がたっている。あるいは私の記憶の中で美化されている部分もあるかもしれない。誰にでも訪れる老いを見せつけられるかもしれない。そんな不安をもって私は「ガルシア」を観た。

杞憂であった。

風李一成はその輝きを失うことなく、ふらりと舞台に現れた。そして難解とも思える物語をよどみなく騙り、昔と同じく観客を煙に巻いた。それでいて「こんなテキトーにしゃべってます」というスタイルの奥に私たちが抱える社会への無関心への警鐘が隠されていたところには、俳優風李一成が良質なウイスキーのように時間をかけて熟成してきたように見て取れた。いや、そう思える私自身が年を重ねたということなのかもしれない。                          (継木承一郎)

④井口時次郎

シャーロックホームズの助手であり、彼の冒険を詳細に書き記した人物としてホームズシリーズに登場するのがワトソン博士である。彼はホームズの鮮やかな推理に驚嘆するごく普通の人物である。これまでコンビニの若い店員に恋をする50男や妻に頭が上がらない小市民を演じてきた井口にとって格好の材料といえよう。しかも、今回は金沢演劇界のレジェンド風李一成との対決である。風李をホームズ、自身をワトソンに見立てるのは有効な作戦であった。

今作「ワトソンの弁明」では、年老いたワトソンがファンか記者と思われる人物にホームズのことを話すというスタイルで、ワトソンがホームズに対して抱いてきた嫉妬や羨望が描かれていた。さらに、このワトソンとホームズの話自体がある作家が書いた物語となる入れ子構造を取っており、ジャージを着た作家が才能あふれる友人を殺すことが示唆されて終焉を迎える。

私はこの物語を、50歳にして「プロゲキ!」を立ち上げた井口からの挑戦状のように受け取った。才気あふれる者への、そして「スタア」を求める観客への挑戦である。

今回敗れはしたものの、風李相手に一歩も引かない戦いを見せた井口。「プロゲキ!」の今後はもちろん、俳優としても井口時次郎からも目が離せない。            (継木承一郎)                               

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