※以下、文字情報です。
①杏亭キリギリス
本番を1週間前に控えた6月8日。私(井口)は富山県南砺市城端にいた。6・16金沢公演で対戦する杏亭キリギリスにインタビューするためである。
「インタビューなんて嫌いなんだよ。」
第一声から挑戦的な言葉を投げかけられた。プロレス的な煽りを意識しているのかとも思ったが、そうではなかった。本当に嫌いなのだ。話すことがではない。おそらくは自分のことを他人に勝手に理解されることが、である。発言を切り取り、「要するにこういうことでしょ?」 とされることが許せないのだ。
静岡で育ち、芸人をめざして活動していたこと、在籍していた劇団SCOTの話、そして今、城端で俳優として活動する上でのこと・・・果ては最近観た舞台についての感想まで、2時間半ほど話し込んだ。途中からインタビューという形は諦めた。一つひとつの話が重要なのではなく、彼が話している姿や熱気、そして時に見せる何かをあきらめたような、拗ねた少年のようなまなざし。それら全てが杏亭キリギリスなのだ。どこか一部を切り取って提示できるものではない。最後に思い切って6・16での演目を尋ねてみた。
「これにしようってのはあるけど、でもまだわかんねえなあ。」
相手にとって不足なし。次は芝居で語ることになる。
(井口時次郎)
②姫川あゆり&市川由紀乃
先月のコラムで、「若手の発掘や育成も忘れないでもらいたい。彼女たちこそがプロゲキの未来の光になるかもしれない」ということを書いたが、今回6月公演で姫川あゆりと市川由紀乃(金沢学院大学演劇部)の2人が出演すると聞き、初めて稽古を見学させてもらうことにした。
野々市のドリームチョップ稽古場で、彼女たちは夜な夜な稽古に励んでいた。いつもは見ることがなかった「作品の舞台裏」をレポートしてみたい。
プロゲキの舞台ではおなじみのいつも舞台に置いてある黒いボックス。その上にテーブルの天板を置き、リビングルームを作っていた。作品はすべてこの場面で進行する。登場人物も姉のみどり(姫川)と妹の真理子(市川)の二人のみ。母親は話の中に出てくるのみで舞台上には現れない。
稽古は、プロゲキ代表の井口が監督(演出?)して進行していた。ある一部分を2人に演じさせ、気になった点を指摘した後もう一度やってみる。これは細かなトライ&エラーを何度も繰り返す「小返し」という稽古で、演劇の稽古としてはスタンダードなものらしいが、門外漢の私には非常に興味深かった。
もっと台詞の言い方や動き方を練習していくのかと思っていたが、むしろ、それを受ける側がどのように反応するかに重点が置かれていた。
目線を合わせる/外す、一歩近づく/離れる、といったひとつひとつの行動が、相手にどのような影響を及ぼすのかを確かめていくようなプロセス。
そして稽古を通して二人の演技が変わっていくのが素人目にもよくわかった。こうやって演劇は創られていくのか。
真剣に稽古に励む二人を見て、私はやはり彼女たちこそがプロゲキの未来の光だという思いを新たにした。というか、彼女たちがメインイベンターへと成長していくストーリーが見たいと思った。
舞台の上だけがステージではない。プロゲキには観客としてのそういう楽しみもある。オジサン趣味と言われるかもしれないが、それでもオジサンは「一生懸命な若者」を応援したくなるものなのだ。あるいは、自分が失ってしまったものをそこに見ているのかもしれない。 (継木承一郎)
最後に出演者ふたりのコメントを掲載します。
【姫川あゆりコメント】
プロゲキ早くも1年間経ちました。私の知り合いは30代以下のお客さんばかりなのですが、おじさんのお芝居よりも若い人がいないと見てられないと口を揃えて言われました。今回の出演者で若いのは私たちだけです。若者枠としてプロゲキを盛り上げようと意気込んで稽古に挑んでます!
【市川由紀乃コメント】
舞台に上がると緊張してしまって、相手とのやりとりに萎縮してしまう自分がいるので、緊張も力に変えられるようにコントロールしていきたいです。今回の稽古を通して、演技の技術の面でも、私自身の考え方の面でも成長できていると実感しました。この経験を、今後様々な場面で活かして行きたいです。
【姫川あゆりコメント】
プロゲキ早くも1年間経ちました。私の知り合いは30代以下のお客さんばかりなのですが、おじさんのお芝居よりも若い人がいないと見てられないと口を揃えて言われました。今回の出演者で若いのは私たちだけです。若者枠としてプロゲキを盛り上げようと意気込んで稽古に挑んでます!
【市川由紀乃コメント】
舞台に上がると緊張してしまって、相手とのやりとりに萎縮してしまう自分がいるので、緊張も力に変えられるようにコントロールしていきたいです。今回の稽古を通して、演技の技術の面でも、私自身の考え方の面でも成長できていると実感しました。この経験を、今後様々な場面で活かして行きたいです。
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