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本インタビューは、旗揚げ公演を直前に控えた4月2日にドリームチョップ稽古場にて行いました。聞き手は権守あずみです。
権守 今日はよろしくお願いします。早速ですが、「プロゲキ!」っていったい何なんですか?
井口 いきなり直球で来るね。チラシなんかにはちょっとぼかして書いてるんだけど、「プロゲキ!」って名称の由来としてはプロレス+演劇ってことなんだよね。それはやっぱり長い事やってきて、演劇とプロレスってすごく似てるところがあるってことなんだけど。
権守 具体的にどういう所が似てるんですか?
井口 体力や技術がなきゃもちろんダメなんだけど、それだけじゃない「その人そのもの」が問われるってところじゃないかな。下手だけどいい役者もいるし、逆にあいつは上手いけど全然響かないんだよなあって奴もいるもんね。
権守 差し障りがなければどなたか教えていただけるとうれしいんですけど。
井口 差し障りあるに決まってるだろ。
権守 では話を戻して、チラシには「片町・香林坊エリアで2ヶ月に1本のハイペース興行」「短編を複数上演するオムニバス形式」って書いてありますけど、これはどういうことなんですか?
井口 まず、発想の原点はまちなかで芝居をやりたいってことだったんだよね。演劇やる人の多くは芸術村を使ってて、もちろんうちもそうだったんだけど、それだけじゃもうダメだよなあって。誤解ないように言うけど、芸術村がダメなわけじゃないんだよ。自由だし、使い勝手もいい。だけど、長い歴史の中で次第に演劇人や演劇好きな観客のためだけのいわゆる「演劇ムラ」になっちゃってるんじゃないかなって。俺がやりたいのはホントにその辺歩いてる人がふらっと観に来ておもしろかったよとか心に響いたよとかってことなんだよ。だから、どうしても駅前とか片町とかでやりたかったわけ。それから、自分自身ずっと好きで芝居やってきたんだけど、これだけ長いことやってて自分の「好き」だけじゃもったいないっていうか、物足りなくなってきた部分があって。やっぱりだくさんの人に観てもらいたいし、金沢というまちに芝居があるってことを知ってもらいたいんだよね。俺よりももっと「いい役者」はたくさんいると思うし、そういう人を紹介もしたい。ただ、そのためには正攻法だけじゃなくてギミックみたいなものも必要だよなって思ったのよ。
権守 すいません。「ギミック」ってなんですか??
井口 うーん。フェイク?盛り?お客さんに楽しんでもらうための仕掛けって言った方がいいかな、そこでやっぱりプロレスにつながるんだけど、最近のプロレスは試合だけじゃなく、マイクパフォーマンスとかSNSとか、とにかくお客さんの心をつかむための工夫をすごくしてるんだよね。で、自分を振り返ってみるとそういう部分が圧倒的に弱いな、じゃあ一丁やってみようじゃないかっていうね。
権守 確かにこのチラシ(注:4月公演で井口の顔が大きく載ったチラシ)はすごいですもんね。
井口 おかげさまで評判悪いけどね。「自意識過剰」「恥ずかしくないのか」って。でも悪評は無名に勝るっていうしね。普通のチラシじゃ埋もれちゃうでしょ。それに上手に作った演劇のチラシって演劇に興味ない人には全く刺さらない。だったらバカだなって思われようと何だろうと目につくほうがいいだろって思って。だから何でもやるよ。いま入場曲とかガウンとか作ってもらってるし。
権守 ガウンに入場曲ですか。本当にプロレスみたいですね。場外乱闘なんかもあったりして。
井口 別にやったっていいんだよ。役者が客席に入っていくなんて、今までの演劇でもいくらでもあったことなんだから。だから、新しいことを始めるのは確かなんだけど今までやってきたことを一から十まで否定するわけじゃなくて、自分の演劇を大切にすることは変わらない。ただ、どんなに真剣にやってたってお客さんに届かなきゃ意味ないから、そこの入口をいろいろ工夫しようってことなんだ。たとえば短編の上演にしたってそうで、最近は家で寝転んで観れる動画でさえ長時間のものはしんどいって人が多いよね。実際に俺も知り合いから「芝居は狭いところに詰め込まれて1時間以上も座りっぱなしじゃなきゃいけないのがイヤだ」って言われたことあるんだよね。だから短編。それから作品と作品の間には休憩したり腰伸ばしたりできるようにしたいと思ってる。4月の旗揚げ公演は俺が一人で三本やるけど、6月以降はゲストにもでてもらうことになるからなんならお客さんは自分が観たいところから来てくれたっていい。会場のDOUBLE金沢さんはライブハウスだからお茶でも飲みながら観てもらうことだってできる。ディナーショーみたいに食事とセットの公演も面白そうだし、やりたいことやれることはいくらだってある。
権守 夢が広がりますね。
井口 俺ことし五十になるけど、いくつになっても夢は見れるからね。今めちゃくちゃワクワクしてるし、毎日が楽しいよね。
権守 ほかにもプロゲキ!でやりたいことって今言える範囲で教えてもらっていいですか?
井口 とにかくお客さんをたくさん入れたい。何やかんや言っても数字は力だからね。そのために何をやるかってことで言うと、観客投票とかね。プロレスみたいに勝ち負けがあるほうがドラマは生まれやすいし、お客さんも応援しがいがあるんじゃないかな。もちろん俺としては井口時次郎を応援してもらいたいけど、若い演劇人が井口を倒すっていうのも当然アリだと思うし。そしたら逆にこっちだってリベンジに向けてどうしていくか、みたいなことを発信したりできるだろうしね。あとは県外にプロゲキ!を持っていきたい。単に県外公演をするっていうんじゃなくて、このシステムを持ち出して、その土地の人にプロゲキ!をやってもらう。そしたらこっちから遠征にいったり、県外の人が金沢のプロゲキ!に参加したりいろんな展開が考えられると思う。もちろん4月の旗揚げをちゃんとやらなきゃ未来はないんで、まずはそこから。一歩一歩だよ。
権守 最後に、旗揚げ公演は井口さんおひとりで3本の作品を演じられるということで、意気込みを教えてください。
井口 まだ俺が何を言ったところで信用がないっていうか、海のものとも山のものともわからないわけだから。だからまずは一人で始めるんだけど、正直言えば、「俺一人でも行くよ。もうそういうところまで来ちゃってるんだよ。」っていうのがホンネなんだよね。面白いことやりたいとか面白いもの観たいって人はいっぱいいる。なのに現状はそこがマッチングできてないんだとすれば、一人でも始めるしかない。自分が真剣にやってればきっと賛同してくれる人は現れる。大きな波もきっとそんなふうに起こるんじゃないかな。
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