(4・27公演リポート)女子躍動!

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以下、文字情報です。

【総評】

開場すると、『女子プロゲキ!』の名にたがわずフューチャーステージでも柳原美聖が登場し、今回の出演者を紹介するネタで笑いを誘う。そしてオープニング動画が非常にクールで期待感が高まったところに4組の出演者たちが華やかに入場した。観客も大いに盛り上がる。上演された4本の作品もそれぞれが演者の雰囲気にマッチしており、タイプの異なるバラエティーに富んだもので見ごたえがあった。こうなると観客投票も迷いに迷う。もちろん投票の結果が即作品の評価になるとは思わないし、司会の朱門氏も毎回のように「演劇に勝ち負けはそぐわないものですが・・・」と注釈をつけている。であれば、私もどこまでも独断と偏見で投票しようと思った。

 ここで書くのもどうかと思うがあえて書く。私は越智サクヤと猪股里彩で迷った。最終的に勝者となった玉城松本組の作品は確かに面白かったし票も伸びると思ったのであえて外した。弥本はまさに「ザ・一人芝居」的で面白かったが少し内容が取りにくいところもあった。そこで越智だが、今まで何度か観た作品とは明らかに違って「まるごとの自分」で勝負して来ているように感じた。詳細は後述するが、これはすごいものを観た。対する猪股は俳優としての基本性能が高く、台詞の一言ひとことに動きの一挙手一投足に思考と稽古が感じられた。で、どっちに入れたかって?それは言わぬが花だろう。

                (継木承一郎)

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(越智サクヤ)

越智サクヤ。モデルとしても活動しているというだけあってまさに「絵になる女優」である。 しかし一方で実際に舞台で観ると思いのほかおとなしいというか自身の表現に迷いがあるような印象も持っていた。

 翻って今回の「なくなった」である。一言で言うと「驚いた」。越智自身が脚本から創作したという本作品はもちろんフィクションではあるだろうが、おそらくは彼女自身の体験も織り込まれた「私演劇」的なものだと私には思われた。

 地元を離れ一人暮らしをしている「私」の祖母が亡くなったところから物語は始まる。葬儀の席で親戚たちから語られる祖母の人生。そして父と祖父の微妙な関係性。「私」は父に対して嫌いな部分もたくさんあったがこれまで見てこなかった部分を知ることで父への認識が少し変わっていく。またこれまで大好きだった祖父のなかに、許せない部分、嫌いになっていく部分も覚えていく。そんな中、田舎から祖父が突然やってくる。観光地をめぐり、ほんのちょっと立ち寄った「私」の家から祖母から譲り受けた一つの品が「なくなった」。祖父が持ち去ったのか、そうでないのか。それは定かではない。人間の、人生の、割り切れなさ。どうしたって全てを見通すことはできない不完全さが浮き彫りになった。

 綺麗な部分も汚い部分も人間にはある。そして両者は混然一体となっていてわかりやすい白黒など見ることはできない。そうした人間の本質を越智は舞台上に広げて見せた。 間違いなく新境地である。これからの彼女に期待大である。

   (継木承一郎)

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(弥本理央)

日本劇作家協会の「戯曲デジタルアーカイブ」掲載の大迫旭洋氏による作品。「プロゲキ!」では演者による自作がほとんどのため、原作者の名前がクレジットされることは非常に珍しい。しかしながら無数に存在する戯曲の中からこの作品を選んだところに弥本の俳優としての野心や矜持がうかがえた。

 さえないコンビニ店員、デリヘル嬢、花火職人、恋人を失った男、離婚した妻、ラジオDJなど、さまざまな人物のそれぞれの人生が「そのころ。」という一言でカットチェンジされていく。弥本は多くの登場人物を丁寧にしかし鮮やかに演じ分けていく。そして後半ではそれぞれの物語がほんの少しずつでも関わっていて、すべてはつながっているのだというメッセージが語られる。

 この作品ではひとりの俳優がさまざまな人物を演じ分けていくところがポイントであるが、弥本の演出(と言っていいだろう)には明らかに原作から改変されている箇所があった。それはラストシーンにおいて弥本がいったん舞台袖に下がり、衣裳の早替えをして再度出てくる場面である(右上の写真参照)。原作の脚本ではこの白いドレスの人物はでてこないため、観る人によってさまざまな想像ができるところではあるが、私は登場した人物が全員ラストシーンで語られる中、一人だけ舞台上に現れない人物、すなわち「恋人を失った男の彼女」ではないかと思った。生きている人間のさまざまな思いや行動がすべてつながっているだけでなく、亡くなった人の思いもまたつながっているのだ。

 脚本自体がやや難解な部分もあり、観客投票では思うような結果が得られなかったかもしれないが、弥本理央、まちがいなくこれから注目株の女優である。

          (継木承一郎)

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(玉城知佳乃&松本音乃)

「プロゲキ!」代表の井口によると、今回の4作品のうち唯一の二人芝居ということであえてセミファイナルに配置したとのことだったが、今回の作品を観れば仮にメインイベントに配置していたとしても誰も異を唱えることはなかったと思われた。

 深夜のコンビニ。玉城演じるバイト店員「彩美」はやる気なくレジに立っている。そこに現れたのは新人バイトの「角樹里」だ。角は新人ながら並外れた接客力を持っているが、自分のことをロミジュリ風に「カドジュリ」と呼ばせたり、妙に彩美のことを聞いてきたりとどこかズレたところがある。二人は微妙な距離感でバイトをこなし、クレーム客や強盗風の男などに対応していく。次第に心理的距離が近づいていき、実は角は彩美の元彼と付き合っていて、元カノの彩美がどんな女性か知るために「潜入」としてこのコンビニでバイトを始めたということが明らかとなる。この男はバンドマンで金にも女にもだらしないダメ人間らしいのだが、このダメ彼氏というバトンが彩美から角に引き継がれていくというところがタイトルの所以だろう。

 玉城のちょっと引いたようなドライさはこれまでの彼女の出演作でもよく見られた得意技なのだろうが、それに加え今作では「ハニワモード」などコメディエンヌとしての実量がふんだんに披露されていた。一方の松本はまだまだ演劇経験が少ないとのことだが、前半のミステリアスさ、後半のダメ彼氏をピュアに愛する可憐さが光った。何より演劇にまっすぐに向かっていく姿勢がいい。この二人が王者となったことには、もちろん異論はない。おめでとう! 

 (継木承一郎)

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(猪股里彩)

光と影。 猪股里彩の舞台を観ながら、私は自分が彼女の姿と同時にスクリーンに映る彼女の影を見ていることに気がついた。

 「目を覚ますと自分の部屋で、男が二人倒れてました。」「こんな時は最初から思い出していったほうがいい。どうかみなさん、私の記憶の整理にお付き合いください。」という衝撃的なオープニングはまるで叙述トリックのミステリーのようであり、猪股の表情を抑えた演技がさらに謎に観客を誘導していく。

 そして彼女の口から語られていくのは二人の男についての話だった。一人はバイトの先輩でどうしようもないダメ男(セミファイナルでもダメ男が出てきたが、トレンドなのかしら?)だが主人公の心に寄り添い、行って欲しい言葉を言ってくれる男。もう一人は地位もお金もあり世間的には間違いなくいい男なのだが、主人公の心にはまったく刺さらない男。彼女は、好きでもない男にプロポーズされるくらいなら好きな男と駆け落ちしようと試みるが、一緒に逃げることにしり込みする男の情けなさに嫌気がさし、ひとりで「ここから逃げてどこかに行く」ことを画策する。具体的な方法は明かされないものの、明らかに彼女は二人の男をトリックによって自らは手を下すことなく殺害している。そして自分はその間、睡眠薬によって眠っていたのだ。目が覚めた時、すべては終わっていた。

 美しさの中に潜む怖さ、というより舞台の途中からずっと、まるで彼女の影が言葉を発しているような錯覚に陥った。私たちの中にもすべてを破壊してどこかに行きたくなる「影」がきっと存在する。そのことに気づかせてしまう恐ろしい舞台だった。

                    (継木承一郎)

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